「日本民蓺館」から 駒場公園を抜けます。
この建物は 旧加賀百万石前田家の第16代当主 前田利為侯爵の本邸だった建物です。
1929年に建築され、現在は重要文化財建築物として一般に公開され 入館料は無料、写真OKの優れものです。(笑)
コンドルを初め、外国人の設計士が洋館を建てることは 珍しくない時代でしたが、
本邸は 塚本 靖氏、高橋 貞太郎氏など 当時の日本のトップ技術陣が設計した チューダー様式の建物です。
開口部の扁平アーチが特徴で 玄関の入口や、階段室の談話室入口等にも 取り入れられています。
飾り柱には 大理石が貼られ アカンサスの文様が、、。
< 玄関ホール >
< 階段ホール >
文様も すべて日本人の手で行われ、細かなところまで 美しく仕上げられています。
唐草模様に混じって 雛菊の模様を発見すると いかにも日本らしいと感じます。
来客が多いため、1階は応接室やパーティー会場として利用され、
2階が プライベートの空間となっています。
戦後、一時期アメリカ極東軍の司令官の官邸として利用されたため、一部改修されたようですが
照明器具は当時のオリジナルで、鋳物で模様があしらわれたり、日本らしからぬデザインですが 日本製です。
駒場の緑と調和させ、窓越しに季節の移り変わりを楽しむことができるように考えられています。
風通しがよく 室内を明るくするために 天井を高くして、上窓をつけるなど
欧州建築のメリットを 確実に活かしています。
欧州建築の粋を集めて建築され、当時、東洋一の邸宅と称さられた 旧前田邸本邸は
外国賓客に日本文化を伝える目的で 和室が設えられるなど
岩崎弥太郎邸と同様、昭和初期における貴顕の生活像が表現された建物のひとつだと 思います。
戦前の侯爵の贅の限りを尽くした暮らしを 云々するつもりはなく、興味も感じないのですが、
当時の建築技能者にとっては 欧州建築を勉強する機会をもらえて ラッキーだったに違いありません。