ホールダウン金物


 阪神大震災の経験をいかして 2000年に建築基準法が大きく変わりました。

 この変更によって 木造建築でも 地震の「横揺れ」だけでなく
 「縦揺れ」や「ねじれ」に対する耐震性が ずいぶん強化されることになりました。

 また2006年には 構造について さらに厳しくなり 日本の建築の強度は飛躍的に進歩しました。
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 施行が義務付けられた 耐震部材の一つに 「ホールダウン金物」という部材があります。

 家の基礎工事現場を見ると アンカーボルトに混じって ニョキっと長い金属棒が埋め込まれていますが
 それがホールダウン金物です。

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 アンカーボルトは 基礎と土台を結びつける役目をしていますが、
 ホールダウン金物は基礎と柱を直接結びつけます。
  (土台を貫通して 柱に留めつけます)

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 ホールダウン金物を設置することで 地震で縦揺れをした際や台風の際に 
 柱が土台や梁から抜けることを防ぎ、家の倒壊を防ぎます。

 新築の場合 すべての柱に対してN値を計算し、その計算結果に基づいて 
 必要な場所にホールダウン金物を取り付けます。

 したがって すべての柱に付ける必要はありませんが 
 構造によっては 1本の柱に2か所付けることもあります。
 また 平屋建てにも付けますし、1階だけでなく2階の柱にも付けます。

 残念なことに欠陥住宅には このホールダウン金物が施行されていないことが多いと聞きます。 
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 しかし 2006年以前の 殆どの木造建築には そのような部材は 施行されていないので
 「後付けのホールダウン金物」という部材が現れました。

 新築時のホールダウン金物のように 基礎コンクリートを固めるときに 埋め込むことはできませんので
 外から留めつける部材です。
 それだけに 個人的には 「防災」というより「減災」という表現が 正しい気がします。
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 大きな部材なので 目立つところに付けるのは 嫌だと言われたこともありますが
 最近では 目隠しのカバーもできています。
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 後付けの工事をする場合
 四隅だけ付ければいいという いい加減な業者もいますが それは誤りなので 注意が必要です。 
by saint-arrow-mam | 2015-01-18 17:03 |   ノスタルジー  | Comments(4)
Commented by TanMatsui at 2015-01-18 18:01
毎年 この時期になると、各所に震災絡みのニュースや記事が載り、幅広く勉強させられます。
私はアンカーボルトは知っていても、ホールダウン金物は初耳、shinmama様は 1級建築士の免許を
お持ちではないかと思います。

今年は前任校の創立110年記念で、もう既に4月18日の記念式典
への招待を貰っていますが、
必ずこの人物がやって来ますので、あとの同窓会の席で、地震関係の疑問点をメモしておいて、
本人に質問したいと思っています。
http://tanmatsui.exblog.jp/18005371/

Commented by shinmama at 2015-01-18 20:00 x
Hiro様

女性チームで仕事をしていたのですが、その中に 若い一級建築士は2名。
残念ながら私は一級ではなく 打ち合わせ専門で、図面は彼女たちが画いてくれました。

一方 建築の現場は男の世界。
女だからと言って許されることはなく 渡り合うだけの知識と根性は 必要だったように思います。

退職してしまうと 建築は遠い世界になってしまいましたが、
わずかな欠片であっても ブログに残すことができて 幸せだと思います。
Commented by okadatoshi at 2015-01-18 22:17
メモはとってないので不正確ですが、関西の夕方のTVで
60メートル以上の高層の建物は国の定めた建築基準の2.5倍の
断層の揺れが起きた場合には建物が崩壊する。
該当する高層建築は全国で2500棟ある。
というナレーションと共に高層住宅が倒れるシミュレーションを
放映していました。
鉄筋の集合住宅は“終の棲家”ではないと思っています。
土から離れた便利さだけの人工的な住環境は馴染めません。
でも救急車がすぐ来てくれる都心のマンションに引っ越し方が
周りで最近目立ちますけど。
Commented by shinmama at 2015-01-19 09:48 x
okadatoshi様

私も見ました。
地震の震度やタイプによっては、
もっと多くの高層建築物が 倒壊するのではないかと思います。

構造偽装事件以後 構造計算、求められる強度、検査システムなどが変わり
厳しく(厳しすぎるかなと思うくらい)なりましたが、
それ以前に 建築された高層建築物が かなりある上に
劣化したまま 補修されていない建築物も かなりあります。

豊洲は2000年ごろから 高層ビルが立ち並んだ新興開発地区なのですが、
地震の度に少しずつ ずれが生じているはずなので、
今は大丈夫でも 少し大きな揺れがあった場合
どの程度耐えられるのかな と思います。

ただ、そういうときには 東京のどこにいても
生き残るのは難しいと 諦めていますけど、、、。(笑)

私も どちらかというと『戸建て派』ですが、
防犯性の良さ、利便性の良さ、完全バリアフリー、維持管理の容易さなど 
マンションには マンションならではの良さがあり、
マンションに住みなれた方に 戸建ては 考えられないかもしれません。


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