旧古河邸は 陸奥宗光の住まいだった場所に 古河財閥が居宅を建てたものですが 設計士は 鹿鳴館などを設計した「日本の近代建築の父」といわれるジョサイア・コンドルです。 外壁は真鶴の新小松石(安山岩)の野面石積み、切妻屋根は天然スレート葺き、 出窓や玄関ポーチ屋根は 銅板瓦棒葺きです。 素朴で重厚な外観は スコットランドの建築や英国の別荘建築に近いイメージです。 当時の洋館は 居宅といいながらも いずこも主として社交場として使われ、 実際の居住部分は 洋館に隣接した木造の在来工法で建てられた住宅でした。 でも この旧古河邸は洋館でありながら、二階の居住空間に和室が組み込まれており 実際に ご家族はこの洋館で暮らしていたそうです。 これは 当時の設計の考え方としては 画期的で 旧古河邸が ジョサイア・コンドルによる「近代建築の集大成」と言われるゆえんでもあります。 旧古河邸の 本館は 延床面積が 414坪 2階建地下1階建てで 主構造は 煉瓦造、小屋組と床梁は木造、一部鉄骨梁を使用しています。 バラ園とは 反対側の「北」に玄関がありますが 自由に内部を見学することは出来ず、ガイドさんの案内に従って移動します。 「大谷美術館」によって管理されている文化財ですので 一般公開に際しては 厳しい制限があり、 各回30人ですので、予約をしていなければ 当日 入場できないことがあります。 古河家の家紋の入った ステンドグラスの下をくぐり、玄関ホールに入ります ①外から ②中から (内部は撮影不可のため 以下の画像は すべて資料よりお借りしました) 広い玄関ホールを取り囲むように いくつかの部屋があり 廊下がない間取りは ゲストを招くことが多い家には 非常に有効です。 ③サンルーム 旧岩崎邸と床のタイルの貼り方が同じでしたので コンドル氏好みの模様なのでしょう。 ④応接間 戦後、連合軍によって使用されていた時に 壁紙も家具も 全てペンキで塗られてしまっていたので 現在の壁紙は複製ですが 貼り方は当時と同じように 湿度を調整するために 和紙の下地の上に貼っています。 この部屋は 天井の廻縁やインテリアに「薔薇」がモチーフとして使われていますが 直彫りの非常に高等な技術が見られます。 シャンデリアも オリジナルの物が残っています。 ⑤ディナールーム 部屋のインテリアには 果物のデザインが彫刻されており、 腰壁を高くして 楽器の生演奏などの音響効果を上げています。 暖炉は 薪ではなく 石炭を燃やすタイプで、周囲は大理石です。 当時の建築には 壁に断熱材が入れられていないので 寒かったでしょうね。 ⑥階段 天井高が高いので 段数が多くなりますが 蹴上は低くゆるやかです。 画像はありませんが 2階のホールにトップライトを設けていて 明るい空間になっています。 ⑦仏間 神社建築でよく見られる花頭窓を 部屋の壁に埋め込んでいるあたりが 日本人ではなく 西洋人の設計だと感じさせられます。 天井高も柱の芯々の幅も 「尺」単位ではないでしょうから 当時、これを作った建具職人が どれほど苦労したか 想像しただけで楽しくなります。 ⑧居間 画像はありませんが 和室と2階のホールの間には 戸襖と木製のドアが二重になっています。 和室から見たら戸襖ですが、ホールからはドアですから あたかも洋室のように見え違和感がありません。 そのこだわりが 今の日本建築にもあればなあ。 あっという間の1時間、 外から見るのと 中を見るのは大違いの 旧古河邸でした。 東京都の所有ながら、大谷美術館が維持管理していることが 幸いしているのかもしれません。
by saint-arrow-mam
| 2017-05-12 06:00
| 庭園に行こう
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Comments(4)
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よし坊
at 2017-05-12 20:02
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これだけ丁寧に説明されて「親善大使をお願いします」と委嘱状が渡されそうですね。
バラの写真の話ですが、以前アドヴァイスしたと思うのですが、光源は太陽光ですね?一番自然な色が出ます。 強調したいなら他の光源を試すのも手です。 買った新カメラ1-DXmⅡ は使い方が複雑すぎて未だに理解できません。宝の持ち腐れです、、、
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TanMatsui at 2017-05-12 20:35
見たことのない この美術館と比べたら、スケールは全く異なるかと思いますが、写真を拝見すると
旧呉海軍鎮守府司令長官官舎 (現入船山記念美術館) と極めて良く似ている感じを受けました。 http://irifuneyama.com/
よし坊様
実際に行って見ると それほどでもなくて ガッカリすることが多い 文化財のなかで 旧古河邸は 見てよかったと思える貴重な文化財でした。 本当は 壁を叩いて 下地の様子を知りたかったのですが さすがにそれは 出来ませんでした。(笑) 最近 その時には感動しても すぐに忘れてしまうので 記憶に残るように これだけは別枠のブログにしました。 薔薇園もコンドルの設計によるのですが、薔薇が家の南側にあるため、 家から見ると薔薇の花の裏側を見るようになってしまいます。 逆に カメラで写す場合は 花の表側と建物を写すことができるので 上手な方が写されたら 素敵な写真になるのでしょうね。
Hiro様
午前中に病院へ定期検査に行った後、夕方Shinpapaが 帰広するので 買い物などに付き合い すっかり疲れてしまいました。 でも今夜から しばらくは のんびりと、、、。(笑) もしもの話ですが、 もし 旧古河邸が 連合軍に接収されなかったら 土足で家の中を歩き回られることもなく、家具を暖炉で燃やされることもなく、 ペンキで塗りつぶされることもなかったと思うので 非常に 残念です。 旧呉海軍鎮守府司令長官官舎には 行ったことが無いですし 呉なら近いので 是非行って見たいです。 教えていただき ありがとうございました。
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