本『空白の天気図』


 この時期になると、再読したくなるのが この本です。

本『空白の天気図』_d0174983_09081844.jpg


 内容(ノンフィクション作家 稲泉 連氏による紹介)
1945年の9月17日、原爆投下からわずか1ヶ月後の広島を、後に「枕崎台風」と呼ばれる強力な台風が襲った。この台風では 全国で3700人超が犠牲になったが、その中で広島での人的被害は 突出して多い約2500人に上った。被爆して破壊した町には情報の通信手段や防災のためのインフラがなく、ほぼ無防備の状態で台風の襲撃を受けたからだ。
 この本の綿密な取材によって描き出すのは「8月6日」と「9月17日」という二重苦に翻弄されながら、この人災と自然災害に立ち向かった広島気象台の人々の群像である。



 2011年の東日本大震災以降、毎年のように大きな災害が起こっていますが、
 そのたびに 私には著者の柳田氏がこの本の中に書いていた

< 取材中に 絶えず私の意識の中に 蠢いていたのは、
いったい困難な時代と状況の中で 仕事を守り抜くということはどういうことなのであり、
そうした職業意識を支えるものはなんなのだろうか、という問いであった > 

 という一節が 頭に浮かび、自らが被爆者となった無名の気象台員たち(主人公)が 未曾有の自然災害と真摯に向き合い、
 台風の観測を続けたことを思い出し、この本を手にします。

 原爆症に苦しみ、ひとりふたりと気象台員が脱落していく様子は 広島県人である私には 容易に想像ができますし、
 協力し合って台風の観測と「黒い雨」などの調査を続けるプロフェッショナルな姿勢は
 NHKのテレビドラマ「芙蓉の人 ~富士山頂の妻」と重なります。(衝撃的なドラマでしたから)


本『空白の天気図』_d0174983_11005391.jpg

 1日でも欠測があれば データの価値は大きく失われるという気象観測。

 人の目に触れることのない、地道な作業を必要とする仕事ですが、
 そのような人々の着実な仕事の積み重ねこそが、今の社会のインフラを支えていることを思うとき、 
 まさに今、災害の現場で自らの職務を全うして 復旧活動に当たっている人々の姿に ダブリます。


by saint-arrow-mam | 2019-08-30 06:00 |   映画・本 | Comments(6)
Commented by okadatoshi at 2019-08-30 07:14
学生に生のデータをexcel処理する演習の例として
過去の気象データのグラフ化を取り扱います。
生きたデータは歴史を物語ります。
那覇の過去の温度は下記です。
https://bit.ly/2zsb2WW
沖縄が戦争で壊滅的な状態で気象データも取れなかったことが分かります。
同じく、神戸の1945/03の欄が「×」印です。
「神戸大空襲」で検索するとこの日がそうでした。
そのような時代でも、その翌月からは記録が残されています。
広島は「×」はありませんでした。原爆投下の日でも記録をとり続けていたことが分かります。
全国の気象庁では職業意識で厳しい環境の中からでも記録がとり続けていたことが分かります。

同じく総務省の統計局から日本人の人口分布をグラフ化させましたが、なぜ二こぶのグラフになるのか、日本が過去に350万人の犠牲者が出た無謀な戦争をしたことなど、学生側から理由がいえる世代はなくなりました。
そのことに触れる教師も戦争を知らない世代になっていますが・・・。
Commented by よし坊 at 2019-08-30 08:38 x
このページがトップページだ、、、
どこをどう読んでいるのかわからなく成ってきた、、、
Commented by saint-arrow-mam at 2019-08-30 09:20
okadatoshi様

>そのことに触れる教師も戦争を知らない世代、、、
そうですよね。
昭和29年に生まれ、戦後の記憶さえない私達の世代が すでにリタイアしているのですから、
現場に立たれている先生方は 脱脂粉乳の膜が貼ったミルクを知らない世代でしょうね。
 
気象データの☓印の意味を 学生さんたちが知ることで
X印が無いことの凄さを知ることに繋がればいいですね。

広島の気象データに「☓」がない、、、、
すごく重くて 貴重なエクセルの1行に 今は ただただ、感動しています。
Commented at 2019-08-30 14:14
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saint-arrow-mam at 2019-08-30 17:12
よし坊様

はーーーい、
ここですよ。
このページが 本日のトップページです。
Commented by saint-arrow-mam at 2019-08-30 17:23
Hiro様

柳田邦男さんは 元NHKの記者のノンフィクション作家なのですが、
柳田国男さんは 最近 再流行しているタピオカを 戦前に食べていたことで ネットで騒がれているのですね。 
検索してみると、研究者として、強い信念をお持ちの方だったようなので、
素晴らしい研究結果を たくさん後世に残されたのでしょうが
その思想形成の過程が 研究材料になっているとは、、、、。

よほどの方だったことがよくわかります。 


<< 月面着陸から 50年 『京都国立博物館』 >>